新春特別企画


 ことのはじまり   
 そもそもの始まりは、1年生の「生活科」の授業でした。
 昔から伝わるお正月の遊びを知り、楽しもうという内容です。
 子どもたちに「お正月の遊びと言えば?」と、定○ショーのような質問を投げかけてみると、出てきたのは「こま回し」「 凧あげ」でした。残念ながら、「福笑い」「すごろく」「かるた」「はねつき」といった遊びまでは知らなかったようです。それらの遊びもただ今体験しつつあるところなのですが、まずは子どもたちが知っている「こま」「凧」からチャレンジすることになりました。
 子どもたちが初めて手にする「こま」。なかなか思うように回ってくれなかったようですが、我々の熱血指導(?)と、それ以上にお父さん方の体験をふまえた実地指導の賜で、ふたりの「こま」が見事に回るようになった頃…。
「こうなってくると、次は凧だな。うん。よし。作ろう。今から作ろう。」
 こう意気込んだのは他ならぬ恒松校長先生。
 思えば、あの一言から始まったのデシタ。
 「飛ぶんですか? その凧」
 さっそく校長先生は、運動場のすみに転がっていた乾いた竹を持ってきて細く割り始めました。そうです。ここではまず、竹ひご製作から始まります。
「よーし。こんなもんだろう。」
 …え? そんなに太くて長いひご(ひごというのかどうか)でいいんですか?
「うん。これぐらい」
 いぶかしげに眺める僕と浦浪さんの目の前には太さ1センチメートル、長さ1メートルの竹ひごが5本。
@  そのひごを図@のように組むそうです。
 もちろん、交点にあたる部分は糸でしばるなどして固定します。
 次にその型ワクより少しも大きめに切ったビニール(これはなんといってもゴミ袋がおすすめ。特に、燃えるゴミ用がよいみたいです)をセロテープではりつけます。…ん? セロテープ? この大きさの凧ですよ。それで大丈夫なんですか?
「だ〜いじょうぶだって」
 次に、竹ひごのはしが多角形の頂点となるようにしながら、ビニールをカットしていきます。すると、そこには八角形ができるはずです(図A)。
 その八角形の中心にある正方形の部分を切り抜きます(図B)。図では説明しやすいように、残っているビニール部分に網掛けしてみました。
 ところで校長先生、竹ひごが1本残っていますよ。
「よし。それじゃあ、そっちをやろうか」
 竹ひごをおよそ3等分して、その両側の部分を覆うようにビニールをはりつけると、ちょうど屋根のような形になるはずです(図C)。間のとぎれた屋根ですけれどね。ちなみに、この二等辺三角形の2辺の長さはどれぐらいなんですか?
「長さ? うーん。いつも雰囲気でやってんだけど」

 
…やっぱり、そのへんもアバウトでいいんですねー。
 さて。いよいよこの凧も完成間近です。図Bの八角形と図Cの屋根をドッキングです(図D)。接着部分は4か所ありますが、ここもやっぱり…
「うん。セロテープ」
 だと思いました。
「できたよ。」
 えっ。もうこれで完成なんですか。
「完成。糸をこうしてつければ…(図E)。ほーら。できた。」
 この糸の張り方は、実際にあげてみてまた微調整をすることにしました。
 僕と浦浪さんからは、どこから見ても「異形の凧」にしか見えません。校長先生いわく「百聞は一見に如かず」とばかりに、さっそく飛ばしてみることになったのですが…。
                        
A
B
C
D
E 完成した凧を
子どもたちは
ゴミ凧
と命名。

名は体を表すのか!?
 そして、凧の魅力のとりこに…
 さて。いよいよ校長先生の自信作『ゴミ袋で作ったうえ不思議な形をしているのに、なぜか必ずよくあがる凧』(以下『ゴミ凧』)のテストフライトです。試験飛行のパイロット(気分だけはね)の栄誉をいただいた僕がさっそくあげようとすると…。

「ああ古屋先生、待った待った」
「え?」
「コレがないと大変なことになるよ」
と手渡してくださったのは厚手の手袋、軍手でした。
…えーっ、そんなにスゴイんですか? 僕はあわてて軍手を装着。
 よし。今度こそ。…おおっ! これはスゴイ!!
 ほんの少しの風をはらむと、上空めざしてまっしぐらにあがっていきます。
 何回の失敗で地面に降りてきたのですが、地面に置かれた状態でも風が吹いてくるとムクムクッと起きあがって飛び上がっていきます。次こそは…よーし。風に乗ったぞ。
 ちょっと太めの凧糸がすごい勢いで繰り出されて…アチィッ! ああっ、軍手がすりきれた!
 人差し指の部分が摩擦でやぶれて、ヤケドをしてしまいました。
 いや、しかしこれはおもしろいですね。半信半疑だった僕や浦浪さんもびっくりです。子どもたちも大喜び。
「あの凧、すごいあがっちょるね」
「鳥が飛びよるところよりも高いで」
 島の上空にはどうやらいつも強風が吹いているようで、一度あがってしまったら空に張りついたように安定しました。
 誰もが、いつまでも空を見上げていました。
 
 子どもたちの凧づくり
 1年生の「生活科」の学習の中には、「おもちゃづくり」というものがあります。身近な材料を使って自分でおもちゃを作り、友だちと仲良くあそぼうというものです。
 子どもたちがどうやら「凧」に興味を持ったらしい今、この機を逃しては…ということで。全校あげて「凧づくり」モードに突入しました。
 といっても、例の『ゴミ凧』は1年生が作るにはかなりの難易度。そこで、子どもにもカンタンに作れる凧を探しました。心当たりはあったんです。前の学校で低学年の先生が子どもたちといっしょに作っておられた、その名も確か『ぐにゃぐにゃ凧』。
 しまった。作り方をしっかり聞いておけばよかった…と思ったのも一瞬のこと。今、僕たちにはインターネットというつよ〜い味方があります。
 試みに「凧」というキーワードで検索してみると、あるんですねー、いっぱい。
 …あっ!! 校長先生の『ゴミ凧』に似た凧が載ってますよ。…デルタボックス? なるほど。全面部の三角形状のパーツが特徴なんですね。「立体凧」のひとつだと紹介してありました。
 おっと、脱線。今は「ぐにゃぐにゃ凧」を探しているんだったと。…ビンゴ! 見つけました。
 以下は、それらのページを参考にして子どもたちといっしょに作った『ぐにゃぐにゃ凧』の作り方です。


 @  A  B
ビニール袋を二つ折りにして寸法をとり、切り取ります。
《寸法》
A…10p    B…20p
C…10p    D…10p
切り取ったビニール袋を開いて、赤線の部分に竹ひごをはります。
全部をとめるのではなく、4か所程度セロテープでとめればバッチリです。
左右の両端に糸を固定し、その中心にあげ糸を結べばできあがり。
(両端への固定は、穴を開けて結ぶよりもセロテープでとめるだけの方が丈夫で子どもにも細工がしやすい)
《低学年の教材として活用する際の工夫》
★「寸法をとる」というのはカンタンそうで難しいことです。そこで図Aのように凧を開いた形を画用紙のような厚紙で作り、開いたビニール袋の上にあててマジックで型をとるようにします。
★図Bの○の部分が左右にずれると、凧がうまく飛びません。中心部に輪を結んで作り、そこへあげ糸を結びつけるようにすればあげ糸が左右に動くことはありません。これでいつでもベストフライト。

 こうしてできあがった「ぐにゃぐにゃ凧」。子どもたちが一歩外に出ただけで、飛び上がりました。歩くだけで風をはらんで空をついてくる様子は、さながらかわいいペットのようです。作り方が簡単なうえに、本当によく飛ぶので子どもたちも大喜びです。
 その後何回か新しく作り、今では「3号機」まで増えています。はじめは作るだけでせいいっぱいでしたが、2号機あたりになると自分の凧にお気に入りの絵をかき、名前(たとえば「たこまる」)をつけてあげる余裕すらうかがえるようになりました。

 そして、そのあまりに美しく優雅な(?)飛び具合に魅せられた大人たちはますます凧のとりこに。 
     
 童心にかえって  
 空高くあがっている凧を見ているときの子どもたちの顔は、とっても輝いています。
「よーし。それなら
子どもたちに、もっともっといろんな凧を見せてあげよう」
という意気込みから、僕たち大人もがんばって凧づくりに挑戦してみることにしました。




ボックス凧  ★☆校長先生の挑戦☆★
 

 この冬、校長先生は数多くの凧づくりに挑戦されましたが、その中でも変わり種といえばやっぱり『ボックス凧』でしょう。
 この凧はいわゆる「立体凧」の代表的なものです。そのため『立体三角凧』とも呼ばれています。
 その正体は、正三角柱です。正三角柱のまわりに紙やビニールを張ったものです。飛んでいる姿はさながら「空飛ぶ行灯(あんどん)」のようです。
 ただし、そうとうジャジャ馬な凧です。あちこち風向きが変わる端島小学校のグラウンドで、上空まであげるのはかなりの難易度です。
 しかし、一度あがってしまえばさすがは立体凧。その安定性は他の凧の追随を許しません。

作り方  【材料…40pの竹ひご9本、40p四方の正方形ビニール(ゴミ袋)3枚】
@ A B
 9本の竹ひごをつかって、正三角柱のフレームを作ります。○でかこんだ接合部分は3本の竹ひごを糸でくくると丈夫なのですが、ちょっと難しい細工です。誰かに手伝ってもらうとよいでしょう。  40p四方の正方形をビニール袋から切り取ったものを、3枚用意します(ここでは説明のために着色しています)。
 そのうち2枚の中心を、直径16pほどに丸く切り取ります。
 1枚はそのまま使います。
 ビニールをフレームにあて、竹ひごをくるむように折り返してセロテープでとめます(濃い色の三角形の部分)。
 赤丸の部分に糸をつけてできあがりです。
 左図のように、完成品をいくつか連ねてあげることもできるそうです。

《小学生の教材として使うには》
★前述のとおり、竹ひごを糸で結んで固定するなどかなり難易度の高い凧です。市販のキットもあるようですが、ひごの接合以外は難しくはありませんし、とにかく形にしさえすればその材料の軽量性から必ずあがるはずです。できれば手作りでチャレンジさせたい凧です。
★ひとりで作るには時間もかかりますので、何人組かで作ると作業もカンタンになってよいかもしれません。



ヘビ凧  ★☆浦浪さんの挑戦☆★

 浦浪さんにも子どもたちや僕たちといっしょに凧を作ってもらいました。ちなみに今回の凧づくりに欠かせない竹ひごは、なんといっても浦浪さん製作のものがイチバンです。しなりといい太さのそろい具合といい、子どもたちの凧がよ〜くあがるのもこの竹ひごのおかげです。
 さて。浦浪さんが選んだのは、今年の干支にちなんだ縁起物『ヘビ凧』です。これは、学校に届いた「こどもの国ニュース」の一コーナーで東京学芸大学の広井先生が紹介しておられたものを参考にしたものですが、凧あげの盛んなタイ国の凧だそうです。

 
作り方  【材料…36pの竹ひご5本、ビニール(ゴミ袋)】
@ A B
 
C @36pの竹ひごを10pほど重なるようにして、その両端を糸で固定します。すると、62pの竹ひごができますね。これが、凧の「天骨」となるそうです。これをAとします。

A18pに切った竹ひごと36pの竹ひごを組み合わせて固定します。これをBとします。(参考資料ではどちらも2本たばねて強化してありましたが、試してみたところ1本ずつでも何とかなくあげることができました)

BAとBを組み合わせて固定するのですが、その際、天骨にあたる2本の竹ひごのすきまにBをはさみこむようにすると、しっかりと固定できます。次にAとBの両端を糸で結び、天骨を曲げて固定します。そのときの糸の長さは22pぐらいがいいそうです。

Cできあがった凧の頭部にそってビニールを切り取り、セロテープではりつけます。そのビニールにお化粧すると楽しくなります。ヘビのような赤い舌をはりつけたりするのもいいですし、写真にある「浦浪号」のように「おてもやん」風にメークするのもアリです。ただしその場合は「ヘビ凧」というよりは「お笑い凧」になってしまいますが(笑)。

D頭部にシッポをつけます。幅はBの底辺の18pに合わせます。長さは4mもあれば、もう迫力満点です。(ちなみにこの凧はシッポの長さ、そしてそのシッポをなびかせて降下する姿から「彗星凧」とも呼ばれる、と広井先生はおっしゃっています)

E頭頂部と、頭頂から24pのところに糸をとりつけ、その真ん中ほどにあげ糸をくくりつけて、完成です。

《小学生の教材として使うには》
★その特色ある形状と飛んでいる姿をぜひ子どもたちに見せてあげたい凧です。ですが、製作が難しい凧でもあります。僕はこの凧を高学年を対象に、科学工作クラブの教材などで取り上げてみたいと思いました。
★その際は、全体の大きさを小さくして、天骨にあたる部分は1本の竹ひごをローソクの火でゆっくりと曲げて作るのもいいかも知れません。細工がカンタンになりますし、軽量化が図れます。そこまでを先生がいっしょに手伝ってあげれば、あとはそれほど難しい細工はありません。
★ちなみに僕は、縮小して作った前出の『ゴミ凧』にヘビ凧の長いシッポをつけてみましたが、大成功でした。シッポの揚力に加えて、頭部にも揚力が発生するのでさらによくあがるようです。
D
E

 「ヘビ凧」の試験飛行も大成功。長いシッポが気ままな風に揺られるその姿は、不気味というよりはとにかくユーモラスの一言。また、長いシッポにはそれ自体が風にあおられることで揚力を生んでいるのだということを知り、その工夫に感心しました。



ぐにゃピン凧   ★☆僕(古屋)の挑戦☆★

 すでにご紹介した『ぐにゃぐにゃ凧』は、2本の竹ひごがたて向きに固定されているだけです。そのため、風を受けるビニール面が自由にその形を変えられるので効果的に最大限の揚力を生んでいると言えます。また、2本の竹ひごだけというシンプルな構造のおかげで軽量化も実現されています。
 しかし僕は、子どもたちがあげている「ぐにゃぐにゃ凧」を見ながらその“構造的欠陥”が気になりました。
 あげている最中に突然失速して、落ちてしまうのです。グラウンドであげているぶんにはいいのですが、釣り竿とリールを使って堤防の上から海に向かってあげている最中に墜落されると困ったもので、何度もズブぬれの凧を回収しました。

 これは、横方向のハリがないためにビニール部分が左の図のようになってしまい、失速してしまうようです。
 それなら横に竹ひごをはればいいのではと思うのですが、それではふつうの凧といっしょになってしまいます。
 柔軟性あふれるビニール面を保ちつつ、それがぐにゃぐにゃしすぎてくっついてしまうことがないようにと工夫して作ったのが、その名も『ぐにゃピン凧』です。
 工夫といっても、実に簡単です。横に竹ひごをピンとはるのですが、その竹ひごの長さをビニールの横の長さよりもちょっと短くしてやる、それだけです。

作り方  【材料…『ぐにゃぐにゃ凧』の材料+16pの竹ひご2本】
@ A B
ビニール袋を二つ折りにして寸法をとり、切り取ります。
《寸法》
A…10p    B…20p
C…10p    D…10p
30pと16pの竹ひごを長方形状に組み合わせ、糸でしばって固定します。 たての竹ひご(図では赤色の竹ひご)だけをセロテープでビニールに固定します。青色の竹ひごは、宙ぶらりんのような状態になります。
 あとは、ぐにゃぐにゃ凧と同じようにあげ糸をとりつけて完成です。

《小学生の教材として使うには》
★ぐにゃぐにゃ凧とまったく同じように作れますが、竹ひごを糸でしばるという細工が必要になります。僕は低学年にぐにゃぐにゃ凧を、そして中学年にこの凧を作らせてみたいと思っています。
★竹ひごを横にはると、なぜか左右のバランスが微妙に狂うことがあります。その際はシッポをつけてやるとよいのですが、教室の飾り付けなどに使う紙テープを適当な大きさで切って使うと便利です。

 この凧は、自分なりにああでもない、こうでもないと考えながら試作した凧です。自分としては絶対にうまくいく自信があったのですが、初めてあげる時はドキドキものでした。リールに巻いた釣り糸を結びつけ、海に向かって放すと…風をはらんで急上昇。計算通り、「ぐにゃぐにゃ凧」のように途中で失速することもありません。あっという間に200m以上ある釣り糸が完全に繰り出されました。
 とにかく感激でした。はるかかなたの青空の中、豆つぶよりも小さく見える凧。半透明のゴミ袋で作ったためにちょっと目を離すと見失ってしまいますが、赤い紙テープで作ったシッポのおかげでかろうじて見つけることができます。
 しばらく時間を忘れて、みんなで空を見つめていました…。

 その後、大きさや材料を変えていくつか作ってみましたが、いずれも驚異的な安定力を発揮しています。



 子どもたちのためと言いながら、凧を持って元気に走り回る“子ども”が5人になっちゃったというお話でした(笑)。

 凧が教えてくれるもの
 凧づくりに明け暮れた1月が過ぎ、2月も半ばとなりました。
 まだ学校内のあちらこちらに、みんなが作った凧が置いてあります。さすが一時期に比べると、子どもたちが凧をあげている姿はあまり見られなくなりました。僕は時々、風がいい日を選んでは糸がめいっぱい出るまで凧あげを楽しんでいます。

親子で凧づくり
母ちゃん、早くかわってよ〜
 1月の中頃、お父さん・お母さんや海くんの弟のみーくんを招いて、みんなで凧づくりをしました。それまでに授業でぐにゃぐにゃ凧を何回か作っていたということもあり、その日は海くんと侑ちゃんが“先生”役。でも、本当はお父さんやお母さんに手伝ってもらっていたみたいですけどね(笑)。
 みなさん、真剣に取り組んでくださいました。真剣に、というよりは子どもたち以上に熱中しておられたというべきでしょう。
 “先生”役の子どもたちが、
「父ちゃん、そこはそうじゃないって」
なーんて一人前なことを言うと、
「そうかあ? 父ちゃんはこうした方がもっと飛ぶと思うで」
と切り返し。その横ではお母さんの凧づくりがマイペースで進んでいきます。
 こんな様子がもうおかしくって。そして、懐かしくって。
 いつか浦浪さんが僕たちに聞かせてくださった話ですが、
「昔は、お兄ちゃん・お姉ちゃんたちに一緒に遊んでもらうために必死で後を追いかけていましたねー。そのためには、凧を作れるようになったり、コマを回せるようになったり、泳げるようにならないと。そういえば、端島全部を使って、青年団も一緒になっての「大かくれんぼ大会」をしたこともあります。そうして私たちは大きくなりました。もちろん、自分が大きくなってからは年下の子どもたちには私たちが教えてあげるんですよ。」
 いいなぁ。本当に地域(島)の人々が一緒になって、子どもたちを育てていたんだなぁ…うらやましく思いました。
 今は端島も若い人がずいぶん減って、地域の人々との直接的な関わりを通じて生活や遊びの中で受け継がれているものが少なくなってしまったとのことです。
 そうして考えると、凧づくりを通じて僕たちが教えられたことがいっぱいあったように思います。
世の中すっかり便利になっちゃって、「作らなくては遊べない」「自分が遊ぶために作る」という一種スリリングな感覚は、久しく忘れていたものでした。そこから生まれるのは、自分が作ったものへの深い愛着です。これが、使い切り・使い捨てのものが目立つご時世だけに新鮮に感じられました。
 そして、凧は日本の伝統文化です。伝統文化のよいところは、それをかけ橋にすれば老若問わずに誰もがふれあえることではないでしょうか。

親子三代受け継がれる「ぶんぶん和凧」
あるカラクリで、大空高く空気を切り裂き、
うなりをあげるその姿はまさに威風堂々
 運動場で子どもたちの歓声が聞こえるので出てみると、「ブーン、ブーン」とうなりをあげて大空を舞っているのは昔懐かしい和凧。海くんのお父さんお手製の凧だそうです。そばでは海くんのおじいちゃんが空を見上げ、孫たちが元気に走り回っています。この凧も、おじいちゃんからお父さんへと受け継がれたものだとか。きっとこれからも、そしていつまでも、子どもたちへと受け継がれていくことでしょう。

 来年の冬はどんな凧にチャレンジしようかな…
 今からそんなことを楽しみにしながら、今年の『凧づくり奮闘記』、これにて完結とさせていただきます。
                            《おわり》