147号
2002年3月号


 TOP NEWS
限りなく理想に近い学校   校長  恒 松 徹 生
 平成14年3月26日、子ども達2名は無事に2年生を終えた。無事にというより立派にと言うべきか。平成13年度の学習の集大成とも言うべき学習発表会の彼らの瞳、背中は自画自賛になるかもしれないが、それは素晴らしかったの一言に尽きる。あれでまだ2年生か。2年生であそこまでやれるのか。当日会場に来られ、ご覧になられた方は、どなたもそう思ったのではないだろうか。侑ちゃん、海くんの、はっきりした発音の詩の朗読。年寄りになりきった「かさこじぞう」の演技、動作、せりふ。二人きりのピアニカの合奏。そして、何よりもそれぞれの題目の間の、進行の言葉。すべて、二人でやった。そして、大成功を収めた。もちろん、担任の古屋先生の熱い指導があったことを抜きには語れないが、やはり、最後は子ども自身である。子ども達は、確実にやった。確実にやり遂げた。なんと素晴らしい子ども達だろう。
 本年度は、年度当初より、「伝え合う力」に重点を置き指導してきた。相手に自分の思いを伝える音読であったり、表現であったり、それらが確実に結実した。小さな島の小さな小学校。しかし、実りは確かだ。
 なぜか。
 それは、子どもの願い、教師の願い、学校の願い、保護者の願い、地域の願い、それらがすべて一点を向いているからだ。侑ちゃん、海くんの成長である。このことは当たり前のようで、他地域では、そうはいかない。それぞれ願いが拡散する。一生懸命やっていてもなかなか成果に繋がらないのだ。
 この一年間を振り返り、児童たった2人の学校を思う。ときどき不安もあったが、今では、胸を張ってこう言える。

端島小学校は、限りなく理想に近い学校であると。


 この紙面をお借りして、人事異動のお知らせをいたします。
 このたびの人事異動により、私は、周東町の川上小学校に転任することになりました。端島小学校在任中は、公私にわたり温かいご支援ご協力を賜り誠にありがとうございました。厚くお礼申し上げます。
 端島は、豊かな自然はもとより、島の方々の穏やかな心に包まれていました。端島で過ごせた2年間は、何にも代えられない財産となりました。「大切なことは目には見えない」…その目に見えない大切なことを多く教えたいただきました。
 今後とも、端島小学校に対しまして、ますますのご指導ご支援をお願い申し上げ、ご挨拶といたします。
 本当にありがとうございました。



 TOPIX
輝け! 学習発表会
 去る3月16日、今年度の学習発表会が行われました。端島大運動会と並んで本校の二大行事である学習発表会に向けてがんばる子どもたちは、今年もキラキラと輝いていました。

◆◇みんなが一つになって◇◆

 この端島小学校では学習発表会にしても運動会にしても、大人も子どもも、みんなが力を合わせてがんばっています。今回は特に劇「かさこじぞう」の準備が大変でした。
 校長先生は大道具のご担当で、「かさこじぞう」ではもっとも大切な六地蔵の製作をお願いしました。海岸のあちこちに転がっている発泡スチロールをガリガリと防波堤で削り、形を整え、リアルな質感の地蔵様ができあがりました。
 浦浪さんには衣装・小道具作りでお世話になりました。島の方から譲っていただいた昔の着物に、わざわざツギまで当てて「貧しさ」を演出。じいさま愛用の「みの」「わらじ」「しょいこ」も古式にのっとった本格的な仕上がり。ここまでこだわると、古めかしさを通り越してカッコいいんですよね。すごいな、昔の日本人って。
 僕は効果音やナレーションのCDを作ったり子どもたちの演技指導をしたりと、主に演出を担当しました。(ちなみに子どもたちが劇中で歌う挿入歌のピアノ伴奏は、校長先生の奥様にお願いしました。どうもありがとうございました。)
 子どもたちは日々練習。ひたすら練習でした。
 かいくんは「じいさま」、ゆうちゃんは「ばあさま」です。練習を重ねるごとに演技が上手になっていきます。声の張り、観客の方をグッと見ながら注目を集める絶妙な間の取り方など、こちらが教えること以上に自分たちで演技を工夫できたようです。それは、「かさこじぞう」のお話を繰り返し読むことで登場人物の心情を理解し、人物になりきるために彼らが努力した結果であり、成長の証なのだと思っています。

◆◇みなさんの想いを胸に◇◆

 学習発表会本番は大成功でした。詩の朗読、劇、合奏、挨拶など、子どもたちは一つとして気の抜けない数々の大役をすべてやり遂げました。たったふたりの2年生が…。
 その重圧を吹っ飛ばした根性と責任感には、心から拍手を送ってあげたいと思います。
 そして、いつも子どもたちのがんばりをほめてくださり、その成長を見守ってくださる端島のみなさんには感謝の気持ちでいっぱいです。
 当日もお忙しい中にもかかわらず、たくさんの方々が足を運んでくださいました。
 何日も前から楽しみにしていたとおっしゃる方。子どもたちに会うたびに「がんばりいよ。見に行くからね」と励ましてくださった方。当日の朝、開演時刻に間に合うようにと1時間以上も早く家を出られたというトシコおばあちゃんは「近頃足の具合がようないんじゃけど、発表会に遅れちゃあいけんからね」と話しておられました。
 …思わず涙が出そうになりました。
 島の道は長く急な坂道です。その道を端島のみなさんが子どもたちのためにと学校をめざして来てくださったのです。
 みなさんのあたたかい心が端島の子どもたちを、のびやかに健やかに育ててくださっているのだとあらためて心を打たれました。
 いつも子どもたちには言い聞かせています。
「君たちが元気にがんばれるのも、家族のみんなが、島のみなさんが、たくさんの人たちが君たちを応援してくださっているからだよ。その人たちへの『ありがとう』という気持ち、感謝の気持ちを決して忘れてはいけないよ。」
 だから子どもたちは知っています。感じています。
 自分たちの背中をいつも支えてくださっている、端島のみなさんのあたたかな想いを…。

 学習発表会の成功は、次の目標への新たな出発でもあります。子どもたちはこれからも努力を続け、自分を磨き、来年もまた新たな輝きを見せてくれることでしょう。
 端島のみなさん。これからもこの子どもたちを励まし、支えてくださいますよう、よろしくお願いいたします。




 ■訃報■

 長い間、端島の「えびすやのおじさん」としてみなさんに親しまれた亀田照雄さんが、3月5日に急逝されました。
 本校が休校する際に編纂された記念誌『忘れじの母校』には照雄さんが寄稿された文章が多く掲載されています。豊かな見識と的確な描写が、古き良き時代の端島の姿を今も鮮やかに伝えています。そこには端島への愛情があふれています。昨年の再開校以来、私たちも何かとお世話になりました。力になっていただきました。それだけに、その突然のお別れがとても残念でした。
 そのご厚情に報いるため、これからも端島の子どもたちの教育に全力を尽くす所存でございます。
 ご冥福をお祈りいたします。




 編集後記 〜 潮騒


さようなら 校長先生
◆春休みに入ったある日のこと、端島っ子3人組に出会いました。それぞれ背中にはリュックを背負っています。「お花見」に行くのだそうです。リュックの中にはゆうちゃん手作りのおにぎりやおやつが入っていました。
◆子どもたちが駈けていきます。みいくんも力強く走っています。自分の足で元気よく駈けていきます。2年前のあの日も桜咲くおだやかな春の日でした。恒松徹生校長先生と僕が初めてこの端島にやって来たあの日。みいくんはまだ乳母車に乗ってたっけ…
◆端島小学校が再開校して2年が過ぎました。一度閉ざされた歴史を甦らせ昔の勢いを取り戻すために、校長先生は大変に尽力されました。いつもそのそばで勉強をさせていただいた僕はそのご苦労をよく知っています。校長先生はかつての端島小学校の遺産を引き継ぐとともに、新しい端島小学校を創り出されました。そのお手伝いができたことを僕は誇りに思います。
◆子どもたちがどんな時も歯を食いしばってがんばってこられたのも、そこに校長先生の笑顔があったからこそです。笑顔でがんばるということは一番難しいことだけど、実は一番大切なことなんだということを子どもたちは校長先生に教わりました。
◆復活した学校が軌道に乗ったのを見届けられた今、校長先生はこの端島を去られます。そのことを伝えた時、子どもたちの目に涙が浮かびました。大好きな人とのお別れ。子どもたちにとっては初めての涙です…。
◆僕は言いました。こういうときは思いっきり泣いてもいいんだぞ。だけど下を向くんじゃない。流れる涙を拳でぬぐって顔を上げなさい。その人の顔をしっかり目に焼き付けなさい…出会いがあるから別れがある。人は別れの涙を流して大きくなっていく。子どもたちが流す涙は校長先生の最後の教えです。
◆2年前には五分咲きだった端島の桜も、今年は校長先生の出立に華を添えるかのように満開です。

恒松校長先生。いつまでもお元気で。